ヨハネによる福音書では、マグダラのマリアは復活後のイエスに最初に立ち会った女性として描かれている。まだ完全に復活を遂げていない状態のイエスに触れようとしたマグダラのマリアが「ノリ・メ・タンゲレ Noli me tangere 我にふれるな」と諌められる有名な場面。西洋絵画でもよく主題として取り上げられた。
ティツィアーノ・ヴェチェッリオ(ヴェチェリオ/Tiziano Vecellio/1488-1576)
「ノリ・メ・タンゲレ 我に触れるな」 1511 カンヴァス・油彩 ロンドン・ナショナルギャラリー
イエスが左手に持っている農具は、マグダラのマリアが復活したイエスを墓地の管理人だと勘違いした場面を表している。
ヨハネによる福音書20章1節、11-18節
さて、一週の初めの日に、朝早くまだ暗いうちに、マグダラのマリアが墓に行くと、墓から石がとりのけてあるのを見た。
マリアは墓の外に立って泣いていた。そして泣きながら、身をかがめて墓の中をのぞくと、白い衣を着たふたりの御使が、イエスの死体のおかれていた場所に、ひとりは頭の方に、ひとりは足の方に、すわっているのを見た。
コレッジョ「ノリ・メ・タンゲレ」 1522-24 プラド美術館(マドリード)
すると、彼らはマリアに、「女よ、なぜ泣いているのか」と言った。マリアは彼らに言った、「だれかが、わたしの主を取り去りました。そして、どこに置いたのか、わからないのです」。
そう言って、うしろをふり向くと、そこにイエスが立っておられるのを見た。しかし、それがイエスであることに気がつかなかった。
イエスは女に言われた、「女よ、なぜ泣いているのか。だれを捜しているのか」。
マリアは、その人が園の番人だと思って言った、「もしあなたが、あのかたを移したのでしたら、どこへ置いたのか、どうぞ、おっしゃって下さい。わたしがそのかたを引き取ります」。
イエスは彼女に「マリアよ」と言われた。マリアはふり返って、イエスにむかってヘブル語で「ラボニ」と言った。それは、先生という意味である。
イエスは彼女に言われた、「わたしにさわってはいけない。わたしは、まだ父のみもとに上っていないのだから。」