ギュスターヴ・クールベ
クールベ (Gustave Courbet/1819-1877) は、19世紀フランスの写実主義の画家。
当時のフランスにおけるロマン主義の風潮に対抗し、現実を空想によらず、ありのままに捉えようとする「写実主義」の主張「レアリスム宣言」で有名。
「レアリスム宣言」において、クールベは「自分は生きた芸術をつくりたいのだ」と述べている。彼の意図は、単なる古典絵画の模倣ではなく、今の時代の風景、人々、現実を自分の感じたままに描くということであった。
21世紀の今日から見れば当然のこのような考え方も、19世紀の保守的な市民たちにとっては、驚くべき革新的なものであったのである。
世界初の個展を開いたクールベ ~レアリスム宣言のルーツ~
1855年、パリにおいて世界で2番目の万国博覧会が開催された。クールベは、この万国博覧会に大作「画家のアトリエ」と「オルナンの埋葬」を出品しようとしたが、落選してしまう。
そこでクールベは、博覧会場のすぐ近くの建物を借り、以下のような看板を立てた。
「ギュスターヴ・クールベ作品展。入場料1フラン」
当時、画家が自分の作品だけを並べた「個展」を開催する習慣はなかった。このクールベの作品展は、「世界初の個展」だとみなされている。
また、この個展の目録に記されたクールベの文章が、後に「レアリスム宣言」と呼ばれることになった。
画家のアトリエ
「画家のアトリエ」 1855 油彩・画布 オルセー美術館
縦約3.6メートル、横約6メートルの大作。正式なタイトルは「画家のアトリエ ~私のアトリエの内部、わが7年間の芸術的な生涯を要約する現実的寓意~(Atelier du peinter, Allegorie reelle determinant une phase de sept annees de me vie artistique.)」。
アトリエで制作するクールベ本人の自画像を中心として、向かって右側にはクールベのレアリスム絵画を理解し支持する友人・知人、後援者らの親しい人物を、左側には当時の政治家など芸術に縁のないブルジョワ階級の人々が描いている。
オルナンの埋葬
縦約3.1メートル、横約6.6メートルの巨大な歴史画。「歴史画」と言えば、有名な英雄や殉教者、古代の神々などを格調高く理想的に描いた絵画が一般的だが、クールベの作品はオルナンという田舎町の葬式に集まった無名な人々をテーマとしたため、発表当時の評判は芳しくなかったという。