無原罪の聖母

月を足の下にし 頭には十二の星の冠をかぶっていた (黙示録12・1)

聖母マリアを描いたミレーの宗教画「無原罪の聖母」(1858年 油彩・キャンバス)。第255代ローマ教皇(在位:1846-1878)として30年以上在位したカトリック教会司祭ピウス9世(Papa Pio IX)の依頼で制作された。

同じ題材の宗教画としては、バルトロメ・エステバン・ムリーリョ、ディエゴ・ベラスケス、エル・グレコらも「無原罪の御宿り(むげんざいのおんやどり)」の題名で知られる作品を残している。

ミレー「無原罪の聖母」でも、これらの作品に共通して描かれる十二の星の冠、青いローブ(マント)、足下の月、ザクロが描写されている。

農民の娘のような素朴な雰囲気

他の画家たちの作品における聖母マリアの表情は、神の祝福を受け崇高で優雅な美人として描かれることがほとんどだが、ミレー「無原罪の聖母」では、バルビゾンの農民の娘のような素朴な雰囲気が感じられる。

絵画の製作を依頼したローマ教皇ピウス9世は、この絵の受け取りを拒否したとされているが、典型的な聖母マリア像と比べてこの垢抜けない印象の表情が、受取拒否の大きな理由の一つだったのかもしれない。

なぜ足下に月が描かれるの?

ミレー「無原罪の聖母」をはじめとする聖母マリアを題材とした宗教画では、星の冠に青いマントを羽織り、月の上に立つ聖母マリアが描かれ、そばにはザクロの実が添えられる。これらの物が何故共通して描かれるのかについてご興味のある方は、こちらの解説ページ「無原罪の御宿り むげんざいのおんやどり」の解説を適宜参照されたい。