『サモトラケのニケ』は、勝利の女神ニケをモチーフとしたヘレニズム期のギリシャ彫刻(大理石)。ルーヴル美術館所蔵。世界中にレプリカが存在する。
1863年に、エーゲ海北東部に位置するギリシャ領のサモトラキ島(サモトラケ島)で、頭部と両腕が失われた状態で発見された(羽は断片化)。
制作年は紀元前190年頃とも推測される。1950年に右手が発見され保管されている。
写真:サモトラケのニケ(ルーヴル美術館所蔵/出典:Wikipedia)
女神ニケ(ニーケー)は、ギリシア神話に登場する勝利の女神で、女神アテナ(アテーナー)の随神。
英語ではナイキ(Nike)と発音され、スポーツ用品メーカー「ナイキ」の社名やロゴ(シンボルマーク)は、この女神ニケに由来している。
船の舳先に降り立つニケ
『サモトラケのニケ』は、勝利の女神ニケが空から船の舳先(へさき)へと降り立った様子を表現した彫像とされている。
ルーヴル美術館における『サモトラケのニケ』の台座には、戦艦の一部のような船体が配置されている。一説には、海戦の勝利を祝って建造されたと考えられている。
台座と土台は、白大理石に灰色の縞の入った大理石で、ロードス島のラルトスの採石場から採掘されたもの。
写真:サモトラケのニケと船の台座(ルーヴル美術館所蔵/出典:Wikipedia)
映画「タイタニック」との関係は?
レオナルド・ディカプリオ主演の映画「タイタニック」では、ヒロインが、タイタニック号の船首付近で両手を広げたポーズを取るシーンがある。
このシーンについては、「サモトラケのニケ」の真似事であるとの解説をネットでよく見かける。
確かに、「サモトラケのニケ」と船は深く結びついており、映画のシーンに何らかの影響を与えている可能性はあるかもしれないが、実際にはどのような理由があるのだろうか?
映画「タイタニック」と女神ニケの関係についてご興味のある方は、こちらのページ「映画「タイタニック」と女神ニケ」の解説を参照されたい。
ロールス・ロイスのマスコットとニケ
1906年にイギリスで設立されたロールス・ロイス社(Rolls-Royce Limited)の自動車部門では、高級自動車向けの公式マスコット「ピリット・オブ・エクスタシー/The spirit of Ecstasy」を1911年頃に完成させた。
写真:ロールス・ロイスのマスコット スピリット・オブ・エクスタシー(出典:Wikipedia)
別名「フライング・レディ Flying Lady」とも呼ばれるこのマスコットは、彫刻家チャールズ・サイクス(Charles Robinson Sykes)が製作を手がけ、ギリシャ彫刻『サモトラケのニケ』が参考にされたという。
ロールス・ロイスのボンネット前方、パルテノン神殿をモチーフとした大型のフロント・グリル上部に設置されたマスコットは、スプリング仕掛けでグリル内部に格納されるほか、「ファントム」モデルでは電動で自動格納される(手動ボタンもあり)。