羊飼いの礼拝(礼賛)
Adoration of the Shepherds
さあ、ベツレヘムへ行こう 幼子イエスを礼拝した羊飼いたち
救い主誕生を告げた御使い達が天の彼方へ帰っていくのを見届けると、目の前の不思議な光景にただ呆然としていた羊飼いたちは、はっと夢から覚めたように互いに語り合り始めた。
「さあ、ベツレヘムへ行って、主がお知らせ下さったその出来事を見てこようではないか」
レンブラント「羊飼いの礼拝 Adoration of the Shepherds」 1646
ベツレヘムにある一軒の宿を見つけた羊飼いたちは、そこでマリアとヨセフ、また飼葉おけに寝かしてある幼な子を捜しあてた。
羊飼いたちはマリアらに、自分たちが天使からイエス誕生を告げられた事を伝えると、人々はみな不思議に思ったが、マリアだけはこの話をすべて心に留めて思いめぐらしていた。
「天使のお告げは本当だった」。羊飼いたちは、自分たちが見聞きしたことが何もかも語られたとおりだったので、神をあがめ、また賛美しながら帰って行った。
(参照:ルカ福音書2章15-20節)
コレッジョの絵画「羊飼いの礼拝 ラ・ノッテ」
下の作品は、ルネサンス期イタリアの画家コレッジョ(Antonio Allegri da Correggio/1489–1534)による絵画「羊飼いの礼拝」。その見事な夜景表現から別名「ラ・ノッテ(夜)」との愛称で親しまれている名画。劣悪な保存状態にさらされて絵の状態があまり芳しくないのが非常に残念。
飼い葉おけの中のイエスをいとおしげに抱き寄せる聖母マリア。奇跡の場面に立ち会った感動に浸る羊飼いたち。幼子イエスは神の栄光によりまばゆい神秘的な光を放ち、その威光はイエスを中心とする二対の対角線により強調されている。
研究:ルカはなぜ羊飼いを選んだのか?
新約聖書における福音記者の一人で、この「羊飼いへの告知」部分を記述した守護聖人のルカ(Lukas)は、イエス誕生の証人としてなぜ一介の羊飼いを選んだのだろうか?
貧しい者の象徴としてだろうか?身分の低い者の代表としてだろうか?その理由について本当の理由は今も明らかにはなっていないが、この点について、宮城学院女子大学名誉教授の山形孝夫氏は、著書「図説 聖書物語 新約篇」の中で次のように述べている。
「…ただし誤解のないように注記すると、羊飼いが野の人であったことは確かだが、そのことは、彼らの貧しさや身分の低さを意味するものではない。むしろ逆に、羊飼いは、遊牧民として農民以上に誇り高い民であった。アブラハムもダヴィデも羊飼いだったのだ。羊飼いは、夜の星の監視者。真っ先に天上界の異変を知る者。ルカが羊飼いを選んだ背景には、そうした動機が働いていた。」