フランシスコ・デ・ゴヤ
Francisco de Goya/1746-1828
カルロス4世の宮廷画家として活躍したロマン主義の画家
フランシスコ・デ・ゴヤ(Francisco de Goya/1746-1828)は、スペインを代表するロマン主義の画家。聴覚を失いながらも、宮廷画家として王室や貴族の肖像画を描き、フランスとの戦争に関連する絵画も数多く残した。
ゴヤの代表作・有名な作品としては、カルロス4世の宮廷画家となった1789年以降の作品として、「裸のマハ」、「着衣のマハ」、「カルロス4世の家族」、「プリンシペ・ピオの丘での銃殺」をご紹介したい。
裸のマハ 初めて女性の陰毛が描かれた問題作
マハとはスペイン語で「小粋な女、小粋なマドリード娘」を意味する。モデル(モチーフ)の女性については、ゴヤと関係のあったアルバ公夫人マリア、または当時のスペイン首相マヌエル・デ・ゴドイの愛人ペピータとする説などがある。
西洋美術において初めて女性の陰毛を描き問題となった。厳格なカトリック国家のスペインにおいて希少な裸婦画であり、ゴヤはこの「裸のマハ」を描いたことで十数年後に異端審問にかけられている。
着衣のマハ
同じモデル、同じ構図の作品。2011年10月から翌年1月末まで、日本の国立西洋美術館で40年ぶりに公開された。
カルロス4世の家族 中央は王妃マリア
「カルロス4世の家族 Familia de Carlos IV」 1800-1801 プラド美術館
宮廷画家の首席として任命されたゴヤがスペイン国王カルロス4世一家を描いた作品。王族の住むアランフェス宮殿へ通いつめ、一人一人の肖像画を習作として描き上げたうえで本作に臨んだという。
中央の女性は王妃マリア・ルイサ・デ・パルマ、両脇には二人の息子ドーニャとフランシスコが描かれている。マリア王妃は意地悪で粗野な女性であり、夫である国王を完全に支配していると見なされていたようだ。
プリンシペ・ピオの丘での銃殺 フランス軍への抵抗
「1808年5月3日、プリンシペ・ピオの丘での銃殺」 1814 プラド美術館
1808年5月、フランス軍に対するマドリード市民の暴動が発生し、捕えられた数百名の反乱者が銃殺刑に処されるシーンが描かれる。ゴヤ本人が処刑の場面を目撃したのかは不明だが、現場に残された犠牲者の山をスケッチで残したとも言われている。
巨人はゴヤの弟子が描いた?
「巨人 El coloso」 1808-1812 プラド美術館
ナポレオンのスペイン侵攻に対する一連のスペイン独立戦争の寓意的な作品とされる。スペイン国境のピレネー山脈を彷彿とさせる山々に、拳を握りしめた裸の巨人が前を睨み立ちふさがる様子が描かれている。
絵画「巨人」は長い間ゴヤの代表作として認識されてきたが、2009年1月のプラド美術館による発表によれば、他のゴヤ作品と比べて筆致(ひっち)の粗さが以前から指摘されており、表現や様式などを再検証した結果、ゴヤではなくその弟子または追随者の作品であると結論づけられた。本作には「AJ」という署名・サインが発見されており、ゴヤの弟子で同じイニシャルのアセンシオ・フリアが真の作者とみられている。