悲劇(海辺の貧しい家族)ピカソ

腕を組み身をすくめ 不運をじっと耐え忍ぶバルセロナの漁師家族

「悲劇 (海辺の貧しい家族)」は、いわゆる「青の時代」の1903年に制作されたピカソの絵画作品。当時ピカソは3回目のパリ訪問を終えてバルセロナに戻っており、この作品はそのバルセロナで見た青い地中海が舞台となっている。

ピカソ「悲劇(海辺の貧しい家族)」 1903 油彩 ワシントン国立美術館(ナショナル・ギャラリー)

寒々しい地中海の海辺で、暗い表情を浮かべる三人の家族が身を寄せ合って素足で立っている。体をすくめるように腕組みをする男性は、不安な気持ちを隠そうともせず、家族を取り巻く不幸や不運にじっと耐え忍んでいるようにも見える。

マニエリスムやロマネスク彫刻の影響も

縦に引き伸ばされたような体のプロポーションは、マニエリスムを代表するスペインの画家エル・グレコの影響だろうか。また、彼らの中世風の衣装や無駄な装飾を排除した装飾には、カタルーニャのロマネスク彫刻の影響も見られるという。

彼らはバルセロナ近くの海岸で働く漁師の家族のようだ。19世紀末から20世紀初頭のバルセロナでは急速な近代化が進み、その弊害として数多くの社会的弱者を生み出した。途方に暮れながら海辺に佇む家族を描いたピカソの絵画「悲劇(海辺の貧しい家族)」には、そうした当時の社会的背景も如実に反映されているのである。

<参考:東京美術「もっと知りたいピカソ 生涯と作品」>

ピカソ「人生 La Vie」との関係は?

「悲劇(海辺の貧しい家族)」と同年の1903年に制作されたピカソの絵画「人生 La Vie」について、中央公論社「カンヴァス世界の名画 ピカソ」では、次のような興味深い解説が加えられているので参考までにご紹介したい。

「・・・同じ年の作品『生』は、しばしば、ゴーギャンの象徴的な大作『われわれはどこから来たのか われわれは何者か われわれはどこへ行くのか』に類比される。『生』につながる『悲劇』もまた同様である。『生』は『悲劇』のヴァリアント(異形・別形)であり、またその完成作であると二重の意味で指摘することができるだろう。」

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